音楽理論の基礎シリーズも、今回の【コード進行編】でラストとなります。
音楽理論を効率よく学習するためには「順序」が大切なので、途中から読み始めた方は、ぜひ最初の【音程編】から順番に読み進めてください。
コード進行が理解できると、その曲の成り立ちがわかるので、いろいろな曲を分析したり、ご自身の作曲やアレンジに役立てたりして、音楽の楽しみ方が一気に増えます。
- 基本的なコード進行
- ノンダイアトニックコードが使われるパターン
- 楽曲分析のツボ
という内容で解説していきます。
基本的なコード進行
基本的なコード進行は、主にそのキーのダイアトニックコードを使って、ケーデンス(終止形)を形成しながら展開されます。
「ダイアトニックコードってなに?」と思った方は前回、前々回の記事で解説しているので、そちらを参考にしてください。
それでは、コード進行の核となるケーデンスのパターンを紹介します。
基本パターンを覚えてしまえば、応用も簡単です。
1)メジャーキーのケーデンス
⭐︎ T – D – T(I – Ⅴ – I)
最もシンプルなケーデンスのパターンです。
I – Ⅴ – I – Ⅴと、繰り返して使われるケースも、多く見られます。
⭐︎ T – SD – T(I – Ⅳ – I)
T – D -T (I – Ⅴ – I)よりもマイルドな進行です。
こちらも、I – Ⅳ – I – Ⅳと、繰り返されるパターンがあります。
⭐︎ T – SD – D – T(I – Ⅳ – Ⅴ – I、I – IIm – Ⅴ – I)
最もメジャーな進行と言って良いでしょう。
特にジャズでは、IIm – Ⅴを中心にして楽曲が組み立てられています。
⭐︎ T – SD – SDm – T(I – Ⅳ – Ⅳm – I)
マイナーキーのダイアトニックコードであるSDm(Ⅳm)を借用したパターン。
少しメロウなニュアンスになります。
⭐︎ T – D – SD – T(I – Ⅴ – Ⅳ – I)
ジャズではほとんど使われませんが、ポップスでは時々見かける進行です。
元々D → SDという進行は禁止されていたらしいのですが、綺麗な流れなので個人的には好きです。
そういえば、ブルース進行のケーデンスもD → SDですよね。
コード進行に、「絶対間違い」というのは、無いと思っています。
2)マイナーキーのケーデンス
⭐︎ Tm – Dm – Tm(Im – Ⅴm – Im)
マイナーキーのケーデンスのシンプルなパターンです。
ポップスなどで強い進行が必要ない場合には、Dm(Ⅴm)がよく使われます。
Im – Ⅴmが繰り返すパターンもあります。
⭐︎ Tm – D – Tm(Im – Ⅴ – Im)
強い進行が必要な状況で、Dm(Ⅴm)がD(Ⅴ)に変化した形です。
こちらもIm – Ⅴを繰り返して使われることがあります。
⭐︎ Tm – SDm – Tm(Im – Ⅳm – Im)
Tm – Dm – Tm(Im – Ⅴm – Im)よりもさらにさりげない進行です。
Im – Ⅳmは繰り返しでも使われます。
⭐︎ Tm – SD – Tm(Im – Ⅳ – Im)
SDm(Ⅳm)がSD(Ⅳ)に変化したことによって、明るいイメージになります。
Im – Ⅳの繰り返しもあります。
⭐︎ Tm – SDm – Dm – Tm(Im – Ⅳm – Ⅴm – Im、Im – IIm(♭5)- Ⅴm – Im)
マイナーの定番進行。
ポップスでサラッといく時には、このパターンがよく使われます。
⭐︎ Tm – SDm – D – Tm(Im – Ⅳm – Ⅴ – Im、Im – IIm(♭5)- Ⅴ – Im)
こちらも定番ですが、D(Ⅴ)に変化してより強い進行となります。
ジャズでは、この進行が圧倒的に多く見られます。
⭐︎ Tm – SD – D – Tm(Im – Ⅳ – Ⅴ – Im)
さらに、SDm(Ⅳm)がSD(Ⅳ)に変化しました。
マイナー感が薄れていきます。
⭐︎ Tm – Dm – SDm – Tm(Im – Ⅴm – Ⅳm – Im)
マイナーでのDm → SDmという逆進行のパターン。
ちょっとした意外性を楽しめる進行です。
⭐︎ Tm – D – SD – Tm(Im – Ⅴ – Ⅳ – Im)
D → SDでもいけます。
インパクトが強めになります。
マイナーキーは、バリエーションが豊富。
3)偽終止について
最終的に解決するコードがI(マイナーではIm)以外である場合、「偽終止」という形になります。
良い意味でリスナーの期待を裏切ることになるので、意外性を演出できます。
メジャーキーの場合、Ⅲm7やⅥm7といったトニックの代理コードに解決する以外に、ⅣM7やⅥM7に解決して、転調したような効果を得ることもあります。
マイナーキーでは、トニックマイナーの代理コードである♭ⅢM7やサブドミナントマイナーの♭ⅥM7の他に、Ⅵm7や♭Ⅶm7に解決したりします。
特に転調感を出したい状況では、これといった決まり事があるわけではないので、自分がカッコいいと思った進行をどんどんトライしてみることをお勧めします。
ノンダイアトニックコードが使われるパターン
ダイアトニックコード以外のコードを「ノンダイアトニックコード」と呼びます。
ノンダイアトニックコードは、主に次の4つに分類されます。
1)セカンダリードミナント
曲の中に出てくるノンダイアトニックコードの中で、最も多いと思われるのがこのセカンダリードミナントです。
「セカンダリードミナント」とは、I(マイナーではIm)以外のダイアトニックコードに解決するためのドミナントで、例えばキーがCの場合に、
- Dm7に行くためのA7
- Em7に行くためのB7
- FM7に行くためのC7
- Am7に行くためのE7
などが挙げられます。
ノンダイアトニックコードが出てきたら、まずはセカンダリードミナントの可能性から、考えてみましょう。
とても有名な進行である、I – Ⅵ7 – IIm7 – Ⅴ7のⅥ7が代表的な使用例です。
また、Ⅴ7にとってのⅤ7、つまり、G7に行くためのD7をドッペルドミナントと呼びます。
2)裏コード
キーがCの時のドミナントコードはG7で、BとFの音がトライトーンを形成しています。
そしてもう一つ、D♭7が共通のトライトーンを持っていて、これを「裏コード」と呼び、D♭7 → Cという進行で使われます。
ドミナントコードと裏コードの関係は、常に増4度(減5度)となります。
また、D♭7とIIm – Ⅴの関係にあるA♭m7も裏コードと呼ばれます。
裏コードもよく使われるので、しっかり押さえておきましょう。
3)マイナーキーからの借用
ケーデンスの解説で、T – SD – SDm – T(I – Ⅳ – Ⅳm – I)という進行を紹介しましたが、このようにメジャーキーの中で、同主調のマイナーキー(CメジャーであればCマイナー)のダイアトニックコードを借用することがあります。
曲によっては、メジャーかマイナーか、よくわからないようなものもあります。
この場合、Ⅳmや♭Ⅶ7といったサブドミナントマイナーのコードが使われます。
4)転調
上記の3つに当てはまらない場合は、一時的に、もしくは完全に転調してしまっていることが考えられます。
その後のコード進行の流れを見て、判断すると良いでしょう。
これも、解釈が難しい場合があります。
楽曲分析のツボ
すでに世に出ている数々の名曲や、ちょっと気になっている曲を分析してみると、自分の引き出しが劇的に増えて、音楽に対する接し方が豊かになります。
手順としては、次のように進めていくと良いでしょう。
1)コード進行を把握してキーを決定する
コード進行を全部書き出して、キーが何かを割り出します。
手掛かりは、以下の3つです。
- 最後に解決しているコードがその曲のキーのトニックであることが多い(偽終止は除く)
- マイナーコードが全音間隔で2つ出てきたら、メジャーキーではIIm7・Ⅲm7、マイナーキーではⅣm7・Ⅴm7の位置にあたる
- メジャートライアドが全音間隔で2つ出てきたら、メジャーキーではⅣM7・Ⅴ7、マイナーキーでは♭ⅥM7・♭Ⅶ7の位置にあたる
2)ケーデンスの分析
曲中で、どのようなタイプのケーデンスが使われているかを分析します。
そして、それがどのような効果をもたらしているかを考えてみると良いでしょう。
3)ノンダイアトニックコードの分析
ノンダイアトニックコードを抽出して、それらがどのような目的で使われているのかを分析します。
以上の3つのステップで分析していけば、大半の楽曲を深く解釈することが可能になりますが、中には、「いくら考えても謎」というようなものもあります。
その場合は、わからない部分は一旦放置して、わかる所だけ分析してみましょう。
それでも充分効果は得られると思います。
とにかく、数をこなすことが大切です。
まとめ
- 基本的なコード進行
- ノンダイアトニックコードが使われるパターン
- 楽曲分析のツボ
について解説しました。
何事も実践することが大事なので、いろいろな曲を分析したり、作曲・アレンジに挑戦したりして、できるだけ多くコード進行について考える機会をつくると良いでしょう。
次回もお楽しみに。