世の中に楽器の教則本はたくさんあり、独学の支えとなっているのですが、作曲について書かれた本は数が少なく、知識を得るのに苦労されているのではないでしょうか?
「とりあえず数多く作曲して、その中からいろいろなことを発見する」というのも間違いではないですし、とても大切なことだと思います。
それでも、あるポイントを意識すれば、より効率良く短時間で作曲のクォリティをアップさせることが可能です。
僕が一時期集中して取り組んで、効果を実感することができた練習方法を紹介しますので、参考にしていただけたら幸いです。
作曲能力とは何か
そもそも、作曲能力の優劣は、どこで判断すれば良いのでしょうか?
僕は、「最初のイメージ通りのものをつくれるかどうか」と、「コンスタントに作曲できるかどうか」が重要な基準になると考えています。
ありがちなのは、「最初のイメージとはかなりかけ離れてしまったけど、これはこれで良い曲ができた」、というパターンです。
「最終的に良い曲ができたのだから、それで良いじゃないか」と言いたいところですが、これをいくら繰り返しても、仕上がりの良し悪しは偶然に左右されることになります。
最初のイメージと違うものは、どんなに良い曲でも「あくまでB案」としてキープするべきで、イメージに沿ったものを必ずひとつ完成させて、それをメインに考える習慣をつけた方が良いでしょう。
いくつかパターンをつくって、一番気に入ったものを、最終的に選択すれば良いのです。
そして、もちろん「数をこなす」というのもとても大切で、多少気に入らない部分があったとしても、とりあえず一旦完成させて、後で「何をどうすれば良くなるか」を冷静に分析するようにします。
先にイメージをしっかりつくるのが、コンスタントに作曲するコツです。
「良いアイデアが浮かんだから作曲する」というのではなく、常に一定のペースで作曲する習慣が身につけば、アイデアの出し方も自然と体得できるでしょう。
ノウハウは、必ず自分の中に蓄積されます。
僕の場合は、オリジナル曲がだいたい50曲を超えたあたりで、なんと無くコツがつかめてきました。
「雰囲気コピー」で作曲能力爆上がり
そんなわけで、僕が若い頃に取り組んでいたのは、決して難しいことではなく、「意識的に〇〇風の曲をつくる」ということです。
僕はこれを「雰囲気コピー」と呼んでいました。
曲の構成や、各パートの役割に対する理解が深まり、そのサウンドの特徴をつかむ力がつくので、イメージ通りの曲をつくるトレーニングとして、とても効果があります。
短時間で、多くのことを学べます。
ここで注意しなければいけないのは、「完コピをしようとしてはいけない」ということです。
完コピをしてしまうと、同じサウンドになるのは当たり前で、そこで思考停止してしまう危険性があります。
楽器の演奏と違って、作曲の完コピは意外と簡単にできてしまうので、注意してください。
目的は「そのサウンドに似せるためには、どのパートやフレーズが鍵になるのかを探る」ことなので、「曲の雰囲気を吸収して、なんとなく寄せていく」意識を持って試行錯誤することが大切です。
雰囲気コピーの具体的な手順
それでは、雰囲気コピーの実際の進め方を解説します。
1)テンポ、リズムパターン、楽器の構成・音色を元の曲とそろえる
ここは、全く同じにしてしまって構いません。
この段階でも、かなり元々の曲に似て来ると思います。
これだけでは「パクリ」にはならないので、安心してください。
2)アレンジを元の曲と同様のイメージにする
まずコード進行を、聴いてみて同じような雰囲気になるように、いろいろと試してみます。
元の曲と違っていても良い部分や、絶対に変えられない部分がつかめてくれば、トレーニングの効果があったと思って良いでしょう。
各楽器の動きも同様に、ある程度自由にできる部分と、元の曲に近づけた方が良い部分をしっかりと意識します。
ここは、ちょっと試行錯誤が必要な部分ですね。
3)元の曲と別パターンのメロディーを考える
メロディーについては、「元の曲に対して、別パターンのものを考える」という意識で臨めば、ちょうど良い距離感のものがつくれるでしょう。
これは、メロディー感覚を養うためにも、とても良いトレーニングで、楽器のアドリブにも応用できます。
また、簡易的に、「オリジナル曲のカラオケバージョンを使って、その上に別パターンのメロディーをのせる」、というだけでも効果的な練習になります。
時間がない時には、ぜひ試してみてください。
これだけでも、びっくりするぐらい効果があると思いますよ。
実際の仕事での応用
実は、この雰囲気コピーのプロセスは、実際の仕事でも応用できる場面がたくさんあります。
発注の際に、「〇〇風の感じでつくってみて」というオーダーは頻繁にありますし、その時には、ほぼ上記の手順で作業を進めていきます。
そして、慣れてくれば、もっと抽象的な「何となく、こういうイメージで」というオーダーにも対応できるようになるのです。
とてもシンプルな手法ですが、僕が取り組んでみた経験上、とても効果を実感することができました。
特に、最初の「曲のテンポ、リズムパターン、楽器の構成・音色を同じにする」というステップは重要で、ここから始めると、作業がずいぶん楽になります。
まとめ
作曲の効果的な練習法として、「雰囲気コピー」を紹介しました。
試行錯誤をたくさんして、知識や経験を蓄積するのはとても大事なことです。
「雰囲気コピー」は、その効果を短期間で何倍にも高めてくれるものと信じています。
また、練習法に対する意識をしっかり持っていると、他の人の曲を聴く態度も変わってきます。
僕は、良い曲だと感じた時は「どこが良かったのか」とか、良くないと思った時には「どこをどう改善すれば良くなるのか」、などと考えるようになりました。
このような、普段のちょっとした習慣も、作曲能力の向上に大きく貢献するでしょう。
次回もお楽しみに。